忘却の彼方に(その2)。
 体中が痒い。

 アトピーだ。

 昔々、若かった頃、カミさんから大人になれないからだとからかわれていたのだが、

年を取ってカミさんも同じ苦しみを味わったようだ。

 ただ、違うのはなっしー氏は、痒い痒いといいながら脚をむしり、背中に爪あとを残し、

乱暴狼藉の限りを尽くすのだが、

カミさんは我慢をしていたようだ。

 すくなくとも痒い痒いと喚くことも無く、何かちっとも効かないのではないかと思われる塗り薬を塗っていたようだ。

 娘二人も塗り薬だが、なっしー氏はそんな中途半端なことでは我慢できず、

やっぱり掻いてしまう。

 ただ、そろそろ雑菌が身体に入ると大きな危険がもたらされる可能性が否定できない年齢になってきているので、

無茶をせず、年相応に冷静に、沈着に、かゆみの治まらない塗り薬で静かに過ごすのが筋だ。

 が、我慢できない。

 あれが欲しいと思えば直ぐ手に入れる。

 これを食べたいと思えば直ぐに食べに行き、

気に入ると何度も何度も同じものを食べ、

気づくと、いつの間にか食べなくなって数ヶ月、数年、その内忘却の彼方に消え去る。

 こんなんで良いんだろうかと思うがそれで還暦過ぎまでやってきてしまったので、

残された月日もそんな形で消費されるんだろうが、

痒いのだけは忘却の彼方に消えて行きそうも無い。

 ああ。

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