陸の孤島から飛んでイスタンブールへと生還して、

先週末にどうしてもと言われていた原稿(短いものだがちょっと気を使う原稿)をやっと送った。

 遅かりし由良の助だが、まあ、無いよりましだ。

 というよりこれが無いと向こうも何にもできない。困っていたことだろう。

 で、気が晴れたのは良いが、午前中に案内してくれるはずの待ち人が来ない。

 待ち人が来ないから原稿ができたのだが、出来てしまえばこっちにも言い分もある。

 何だ、この野郎!と言った心境だが、自分もなんだこの野郎とみんなから思われていることだろう。

 昼過ぎ、1時か2時頃だったか、街に出た。

 と、たちまち話しかけられる。

 『日本人?』

 そうだと答えると

 『絨毯は興味ない?』

 『興味ない』

 『どこに住んでる?』

 『横浜』

 『横浜は行ったことがある、ずいぶん前だけど』

 『あ、そう』(とつれなく答える)

 『花瓶は?』

 『興味ない。お皿を買ったから焼物はもう要らない』

 『日本に行ったことあるので、日本の話しちょっと聞かせて。そのお皿の話も聞きたいし』

と無理やり小さな店に連れて行かれた、入った途端に地階に案内される。

 別の男が対応する。

 一応アンケートのような質問をする、これで時間稼ぎか?

 これどうぞ、と甘いお茶を出される。

 口をつけたが、やめておくべきだったと後悔する。

 なんだか食前に飲んだ薬か疲れの所為か、このお茶の所為か分からないが、

 ちょっとぼんやりする。

 『ひょっとしたらやばいかも、このお茶。このまま眠ってしまったりしないか』

とふと思う。

 世間話の後、本性を顕す、というほどじゃなくて、結局、というか案の定というか、絨毯屋だった。

 ああ、のこのこ付いてくるんじゃなかったと後悔し直す。

 睡眠薬が気になる。

 『絨毯要らない?』としつこい。

 『絨毯なら要らないから帰る!』と言った。

 『いや、もうちょっと話を聞かせてほしい。自分は三鷹に住んでいたの。

横浜も何度か行って懐かしいし、絨毯の話も聞いてもらいたいし』

と、しつこい。

 『絨毯興味ないって!』と言って半怒声で立ち上がると、、

 『失礼でしょ? 丁寧に話してるのに。そんな対応韓国人みたい、日本人じゃないみたいだよ!』

 『絨毯は要らないの!母親が対馬の人間だから、朝鮮系の血もだいぶ入ってるよ!』

と、言い置いて飛び出した。

 もちろん韓国人と怒りっぽいのは関係ないが、それとは無関係になっしー氏が気が短いのは確かだ。

 その後の2時間ほどの間の街歩き中に、3,4回絨毯の話を持ちかけられた。

 気の弱い人だったら買っちゃうな、とは思ったが、

今回の相手の決定的なミスは地階に連れて行ったことだ。

 そこで、こっちも気構えて仕舞った

(でも絨毯は買わないだろう。ほしければ父親があちこちで引っかかって買ってきたものがいっぱいある)。

 トルコにどれくらいの本物のワルがいるのか知らないが、本物のワルでなくて良かった。

 それにしても物売りの多いこと。

 あ、新宿も同じか。無視しちゃえば良いのに、つい応えちゃうのがいけないな。

 ただ、成り行きとは言え地階に付いていくなんてこっちもどうかしていた。

 店に入った途端に地階に案内されて、2人きりにされてしまったのだから。

 地階の魔球がビーンボールになってしまって、こっちもかっと来ておかげで危うく避けられたのかも。

 旅に慣れてくると緊張が緩む、とりわけ少し長旅になって疲れてくると。

 
 ※ 最後の原稿の催促に返信しなかったものだから嫌われたと落ち込んでいました、と返事が来た。世の中なんていい人がいるんだろう。こっちこそ恐縮してしまった。

 ※※ 巨人の星ほど荒唐無稽ではありませんが、ちばてつや氏の『ちかいの魔球』という荒唐無稽の漫画がありました。コメ下さる方々はお分かりでしょうが、もう、ほとんどの人に通じないんでしょうね。あ、『飛んでイスタンブール』もヤバイ?


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