『ああ、万事休す』
 『ああ、万事休す』
 カンペールと言う町に来た。

 近くにあるロクロナンという小さな町に行った。

 中世の街並がそのまま残っていて、おとぎの国に迷い込んだような、そんな町だった。人口数百。しかも二桁に近い方の百だろう。

 バスを降りてカメラをリュックから出したら、

ショルダーがリュックの中に無い。

 『ええっ?!』 一瞬体から力が抜けていった。

 財布とパスポートも何もかも入ったショルダーだ。

 バスを降りるときカメラの肩紐を持ったので、それでショルダーを持った積りになったのだろう。

 バスの中では時計がおかしくなっていて

(海抜マイナス150メートル。気圧1028hpと時計が言うので)、

景色を見るのも忘れてその調整に夢中になっていた。

 そして慌てて降りたら、その全財産の入ったショルダーが無かった。

 直ぐ近くでクリスマス準備の作業をしていた人に、

『全財産の入ったショルダーをバスの中に忘れた。警察はどこ?』

と聞いたら

『ええっ?! でも、警察じゃなくって、とりあえず役場じゃ無いか?』 

と言われて、走っていった。

 役場の女性が、

(小さな村役場、女性が一人いるだけで、誰もいない。奥には誰かいるのかも知れないが)

バス会社の電話番号(時刻表に書いてある)を教えてくれ、電話をしたところ、

実際運行しているのは別の会社、と言われ、その会社に電話をした。

 何度呼び出しても通じない。

 もうだめだ、とりあえず警察にと思ったのだが、

役場の女性は

『警察じゃダメだよ、盗まれたのなら取扱ってくれるけど』

そうしているうちに時間が経つ。

 『ああ、万事休す』

 と諦めかけた時、バスの運行会社の方から携帯に電話が入って、

 『帰りの便で持っていくから、同じ停留所で待っていてくれ』

 結局置き忘れに気づいて4時間後。

 無事に帰ってきたときは、西の山にちょうど日が沈んでいく、とても美しい夕日が消えかかった5時半だった

(カメラの電池が無くなってこの夕日の写真が撮れなかったのは返す返すも残念だ)。

 戻って来た財布の中を見たら20ユーロ札が無い。

 『ちょっと一杯位は渡すべきかな?』

とは思うが、10ユーロじゃ少ないが50ユーロじゃ多い。

 迷いながら10ユーロを渡した

 我ながらケチなヤツ。情けない。これじゃ出世はしない(というかしなかった)のも良く分かる。

 ただ、電話では、行きの運転手が帰りに持って来るということだったが、別の人だったので、こういう判断になった。

 どうも屁理屈だが。

 それにしても波乱万丈、我ながら改めて小物の証明がされた一日だった。

 ※ 写真はそういう精神状態で撮った写真です。

コメント

ミハーハハ
2010年12月10日10:58

ああ、良かった!
それにしても全財産を失って、茫然としているなっしー様。なぜか映画のシーンのようで・・・

美歩
2010年12月10日11:38

ドキドキしながら読みました。
親切な方たちでよかったですね!
都会じゃないのが幸いだったのかも。

この先もよい旅を♪(ドキドキも楽しいけれど!)

nassie
2010年12月10日14:13

ミハーハハさん、美歩さん
お騒がせしました。帰りの便で持っていく、と言う返事があったときにもう見つかっているのだな、とは思いましたが、現物を見るまではやはり安心できませんものね。でも完全にボケ始めていますね。
夕日が凄くきれいだったので、また来て見たいです。
明日帰ろうと思っていて、切符とってあるんですが、もう一日伸ばして、別の街に行こうかな、折角のブルターニュだから、と一晩眠って思い始めています。

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