バスに乗らない運転手
 周りから不当だと言われるくらい、髪が黒々としていた。

 妻は末娘を産んだあたりで、もう真っ白になって、その後ずっと染めている。

 世間では 

「奥さんにばかり苦労かけて、能天気だね」

と陰口をたたかれていることだろう。 

 本当だからちょっとつらい。

 ところが、ここ数ヶ月、とりわけ来仏以来の3ヶ月くらいで、妻の背中が遠くに見えるくらいに近づいたようだ。

 世間の人は

「よっぽど苦労したんだろう」

と思ってくれるだろうから、そういうことにしておこう。

 ここで愚痴を並べてはいるが、日本にいるよりずっと良い。

 「授業と締め切りさえなければこんな良い商売はない」、

と常々に言ってはいたのだが、

これ、バスのドライバーが「バスに乗らないで給料くれ」と言ってるのと同じ。

 でも、今は本当にバスに乗っていないんだ、このドライバーは。


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