自転車派列伝ーその4
 ハノイでチャーカーという雷魚の揚げ鍋を食べていた時の話だ。

 引率で連れて行った学生が、ラーメン狂いで、

自転車でラーメンを食べに行く話をしていた。

 都内近郊はともかく、東北でも九州でもおいしいラーメン屋があると聞くと自転車で食べに行く。もちろん和歌山ラーメンのハシゴも自転車でやったそうだ。

 何軒かピックアップしてから行くそうだが、上手そうと匂うと入って食べるらしい。

 これも相当な自転車派である。

 が、彼の場合はラーメンが主で自転車が従だが、変と言えば変、合理的と言えば合理的な組み合わせだ。

 ラーメン一杯のために新幹線ではとてもじゃないが元が取れない。

 自転車で走ればその間に腹がこなれる。

 この自転車の話が出たときに、弁護士さんがぽろっと仰った。

 「私も、ハノイに来るときにとりあえずベトナムを見ておこうと思って、まずホーチミン(我々世代にはサイゴンの方がなじみやすい)に入って、それからハノイまで自転車で見て回りました」

 1500kmくらいはある。信号も交通マナーもほとんど無いのでやはり怖いはずだ。

 ちなみにベトナムでは車で事故になりそうだとブレーキよりアクセルを踏むらしい。

 死亡時の慰謝料(命の値段)よりも治療費(医者の人件費+医療機器+薬代)の方がず~っと高いからだそうだ。

 「何でベトナムにいらっしゃったんですか?」

と、やはり気になるので聞いてみたら

 「以前、インドに留学していて、アジアに興味あるんですよ」

と仰った。

 「インドも留学期間が終わって、何ヶ月かかけて自転車で見て回りました。アジア、好きなんですよね」 

 で、こうなると、ハノイビールの勢いも手伝って、いろんな話が飛び出してくる。

 ハノイ事務所の所長は検察官の方だが、極真空手有段者の武闘派。

 「いざとなれば、自分の身は自分で守らなければなりませんからね。現場に踏み込む時もあるんだから」

 もちろん検察官になるために極真空手を習ったわけではないだろうが。

 事務方の責任者の方は、日本では、東京駅から東陽町の自宅まで、帰宅の時には裸足で歩いて帰る(夜なので目立たない)という野生派。自転車派ではない。

 もちろん気持ちが良いからだそうだ、裸足の方が。

 この裸足の野生派は、カトウタキ

(社会党時代の女性タレント議員の名前だが、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスを指す。今やアジアの火薬庫で近寄れない)

以外アジアの国は全部踏破しているという、筋金入りのアジア派だ。

 実は、カトウタキの独立前に、いったんアジアを制覇していたのに、アジアが増えてしまって、ここが未到地になってしまったんだそうだ。

 学生時代からお金が少し貯まるとアジアを旅行していて、

 ほとんど旅行者が足を踏み入れなかった時代の北朝鮮にも行ったことがあるし、

シベリア鉄道の極東部分もず~っと昔に乗っているそうだ。

 こうしてみると、どうもなっしーは普通過ぎて自転車派にもアジア派にもなれそうにない。
 

コメント

ミハーハハ
2010年6月28日10:57

今年90歳になる母はグルジア、ウズベキスタンに三十年前にいきました。まだソビエト時代でしたが人々はのんびり暮らしていてバザールが楽しかったといっていました。もちろん旅人の視点でしかありませんが、今の状況を考えると複雑ですね。かつてのアフガニスタンのように貴重な歴史遺産が破壊されたりすることのないよう願うばかりです。

nassie
2010年6月28日14:13

60歳でグルジア、ウズベキスタンですか。随分旅慣れたお母様ですね。
臆病ななっしーはなかなか勇気がありません。あこがれはありますが。
裸足の野生派は、週末が来ると任地の周辺の国境越えやら少数民族村などに行くそうですが、そういうバイタリティがないとアジア派にはなれませんね。

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