自転車派列伝ーその1
 やはり彼から始めなくてはならない。

 教え子のA君。 

 ちょっと引っ込み思案で、良い奴なんだが、少し孤立する感じの学生だった。

 夏休み明けに、休み中に何をしたか、みんなから聞いた。

 自転車で青森まで行った、と言う。

 「へ~ぇ。凄いね。どういうルートだったの?奥の細道?」

 「いや、新潟まで行って、それから日本海を」

 「ふ~ん。本格的な自転車持ってんだ」

 「いえ、ママチャリです。田舎から出てくるとき持ってきた」

 「えっ?ママチャリ?」

 「そうです。チェーンが引っかかって、がしゃっ、がしゃって言うんですが」

 「へ~ぇ。前からやってんの?自転車」

 「初めてなんです。先生が自転車欲しい欲しいって仰ってたから、とりあえずやってみようと思って」

 「地図とか持ち物なんかは?」

 「着替え一組だけ(普通の服です。自転車用のではなく)。地図なしです」

 「えっ?」

 「17号(国道です)で、新潟ってのを標識で探してずっと『新潟』『新潟』『新潟』って、ひたすらこいだんです。自転車」

 「で、新潟に着いたら、今度は青森を探して『青森』『青森』って」

 「泊まるところは?」

 「基本的には野宿だけど、時々お風呂入るためにビジネスに」

 で、彼はその後本格的な自転車を買って、『下関』、『下関』と念じながら下関まで行き、

 九州縦断(というか往復したそうだ)、北海道半周、四国88カ所巡り(山あり谷ありでかなり厳しいらしい)、歩いて文京区から鎌倉までなど、地図なしで(さすがに北海道は地図を持ったらしい)回ったそうだ。

 もちろん一人での北海道は(熊の問題があるので)やっぱり怖かったそうです。
  
 本格的自転車と言っても安物らしいが、

「やっぱ先生。本物は凄いですよ」

「寮から大学まで6分かかっていたのが5分ですからね。1分も違うんですよ」

 確かに6時間かかるところが5時間で行けるんだから凄いけど。 

コメント

ミハーハハ
2010年6月10日9:30

次男はいっぱしのチャリ屋で、本格ものの一番安いのにのっていますヒマさえあれば走りに行くか、近所の自転車屋の店先にいます。だけど自分でパンク修理しているのは見たことない。

べとしちは(っていうんですね。)「のだめ」で一気に有名になりましたね。私もべとさんのシンフォニーの中で一番好きです。長男が赤ん坊のころこれをかけると、冒頭のジャーンでいつも泣きだしていました。

nassie
2010年6月10日10:06

 我が家もどちらかというと肉体派。でもチャリはいませんね。

 通勤途中に、何年間かツール・ド・フランスのスタッフをやったという人の自転車屋があって(一度は出場したと聞いたような気がしますが、口べたな店主と物覚えの悪い客の話なのでちょっと?)、買うんだったらここと決めているんですが、「だったら」がなかなか「だ」になりません。

 べとしちも良いですね。
 確かにちょっと影が薄かったのに一挙にスターになっちゃいましたが。
 
 3食自炊で頑張ってるから少し位CD買っても小蔵大臣許してくれるかな…。
 あ、もう3時。お休みなさい。眠くないんだけど…。 

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