『本の読み方ースロー・リーディングの実践』 平野啓一郎
 なっしーの学部では、新入生向けに、いわば大学生入門のようなゼミをおいていて、

 その教材として、なっしーは

『日蝕』の平野啓一郎氏によるこの『スロー・リーディングの実践』と、

『薔薇の名前』のウンベルト・エーコの『論文作法』

を読ませることにしている。


 今回時間がある(と言うかあり過ぎる)ので

『スロー・リーディング』

を持って来て、改めて読み直したが、

このスロー・リーディングを、なんと、ものすごく《ファスト・リーディング》していたことか、と反省している。

 この本の内容は、読んでのお楽しみ、と言うことにしたいが

(ではお前が今書いているのは何なんだと言われそうだが)、

いずれにしても、われわれは、どうしても速く読まなければならないという強迫観念のようなものがあって、先へ先へと急ぎ勝ちだが、

ただ、たとえば一冊の本を書くのに、

著者がどれだけ時間をかけて構想し、資料を集め、書き、書き直し、また書き直しをしたかを思えば、

それこそ数時間で読む、読んだ気になるというのは、著者に大変失礼なことではあろう。
 
 読書は著者との対話であるが格闘でもある。

 もっとも、中にはあんまり失礼にならないような著者や著作があるのは事実なので、その辺は自分で判断し、また、他人のアドバイスをもらえば良い(ただし鵜呑みにしないように)。
 
 『スロー・リーディング』の中で、

読者と川端の面白い対決が紹介されていたり、

また、平野氏自身が自著を解剖しているところなど、

一般読者にとっても大変興味深いものだろう。

 なお、学生には、

この本の最後にある『性の歴史I』(ミシェル・フーコー)を題材にした、

文章を《視覚化》するテクニックを体験させるなどして、

読み方のテクニックのひとつを学ばせるようにしている。


※ ゼミではもうひとつ資料の集め方、論文の書き方について『論文作法』を用いてこれも実践的にやらせているが、これも興味あればどうぞ。
 なお、この『論文作法』はいんちき論文を書いている多くの学者を揶揄したものと言われているそうだが、ちょっと胃の辺りがシクシクする話ではある。

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