Vous etes chinois?(中国人ですか?)
 もう20年ほど前になるが、エクスに留学していた時のことだが、もちろん多少日本でフランス語を勉強はしていたが到底実用には堪えない。
 
 そこで、大学付属の語学学校に通った。

 クラス分けテストで中レベルの中くらい。

 その最初の授業の2時間目。変なベトナム人が、

 「クラス分けで少し上のクラスになったが、とてもついていけない。

 担当の先生に相談したらこのクラスを紹介された」

 と言って入ってきた。

 昼休みに、そのベトナム人と中庭で会って、目を合わさないようにしていたが、

 クラスにはアジア人は2人しかいないので、そのベトナム人が、話しかけてきた。

 「Vous etes chinois?(中国人ですか?)」

 「Non. Je suis japonais.(いえ、日本人です)」

 「えっ? 日本の方ですか?」

 「お仕事は?」

 「教員です」

 「ご専門は?」

 「××です」
 
 「えっ?」

 「私 A大学のTですが」

 「ええっ?! 私、B大学のなっしーです」

 と、活字では何度も顔を合わせていた旧知の間柄だったのだ。

 それからの2年間はお互いに行ったり来たり、

 2人で、また、家族一緒にフランスのあちこちに旅行したり、

 日本に帰ってからもず~っと研究会やら公的な仕事もご一緒させていただいて、

 当然今回の来仏中の授業もお任せしてきた。

 あの時もしT先生がクラスを下げて来てなかったら、

 その後のなっしーの全生涯がどう変質していたかも分からないほどの運命的な出会いだった。

 もちろん狭い世界なので、どっかでお知り合いになる事はあったろうが、

 毎週20時間の授業を1年間(実質は半年余りだが)一緒に受け、

 授業が終わったあと、バーに行って夜中まで(これは週1回火曜日の夜)べろんべろんになるまで飲む

 と言うのとは当然付き合いの中身も質も違ってくる。

 ただ、その運命的な出会いは、

 向こうはこっちを本当に中国人だと思ったようだが

 こっちも向こうを本当にベトナム人だと思った、運命的な出会いだった。

 

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