『老人力』 全一冊 赤瀬川原平 2001年9月第1冊発行 (ちくま文庫)
 10年ほど前、教務主任といういわば雑務の責任者をしていた事があって、入試の責任者も兼ねていた。

 で、大変な失態をしてしまったのだ。

 入試問題の校正の日を忘れ家でごろごろしていて、電話で呼び出され、あわてて駆けつけたが(2時間遅れ)、これが公務スケジュールを忘れた初めての記念日となった。

 そのすぐ後、今度は自分の科目の試験日を間違え、1日前に監督をしに行ったが、これは当然だが事なきを得た。

 当時、流行り言葉にもなっていて、「ああ、老人力がついてきたなぁ」と思わずつぶやいたところ、同僚が「まだまだだよ」と言い、「ほんとに読んでごらんよ。すごいから」、といわれて読んだ。

 確かにすごい! まだまだ大丈夫だぞ。

 その後、他人にも「後楽園のジャイアンツ戦」の話を引きながら、薦めていた。

 「まだまだだ、って元気がつくから」と。

 10年経って、なんだか赤瀬川氏の背中がすぐ前に見えるようになって来た気がして今回読み直した。

 愕然とした、というか、唖然としたというか。

 ほとんど中身を覚えていないのだ。

 初めて読むかのように、まったく新鮮に読み直した。というか、読んだ。

 しかも「後楽園のジャイアンツ戦」の話は、思っていたのとまるで話が違っていた。

 老人力は記憶を失わせるだけでなく記憶を捏造する!

 うすうす感じてはいたけれども。

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